先天的・身体的・生物学的性別を示すセックス(Sex)に対して、後天的・社会的・文化的性別のことをジェンダー(Gender)といいます。(この2つの境界線を簡単に定義するのは非常に難しいです。)
世の中には、生物学的に女性と男性が存在します。これは哺乳類をはじめとしてもっと下等動物でさえ、有史以前より、子孫繁栄の一つの手段として、この方法が取られています。しかし、性別に関わる習慣は、地域や時代によって異なり、先天的(生物学的)な性とは区別して考えることができ、「文化的性(ジェンダー)」という言葉が用いられるようになりました。
例えば、「男の子は・・・しなければならない」とか「彼女は、女性らしくない女だな」とか、日頃子供の教育や生活の中で使う言葉の中でもジェンダーは存在します。地域や歴史で考えるとイスラム教では「女性はその美しいところを見せてはいけない」という戒律、江戸時代に既婚女性が歯にお歯黒を塗る習慣なども挙げられます。
しかし、近年「ジェンダーという概念」「ジェンダー論」などに対するさまざまな思想が存在し、世界的規模でさまざま意見が存在するのが現状です。
最近、西洋医学でもこの数年ジェンダー医療が叫ばれています。その捉え方はさまざまですが、女性のための女性専門科ができ、女性の医師が担当するなどがあります。最近、泌尿器科でも女性の医師が増えてきていますが、男性の不本意な外部感染型の性感染症などは女医にはなしにくい場合もあります。
このように女性には女性、男性には男性でなければ、気持ちがわからないといわれれば当然のようにも思えますが、産婦人科などかかるときには、「男性の医師より女性の医師の方がいいけれど、子供を産んだことのない女医さんだったら、家族円満、子沢山の男性の医師の方がいい」などという意見もあります。しかし、医学書にかかれている内容は、主観的なものではなく、全く文学的、哲学的要素を持った感情に訴えるものではありません。医学教育の中でジェンダーまで考慮するのはかなり難しいとも言えます。
一方、漢方では、女と男は陰と陽に区別でき、女性がよく使う漢方と男性がよく使う漢方とを大まかに区別できたりもします。医学一般的にいえば、生物学的上の構造やエストロゲン、プロゲステロン、テストステロンなど男性・女性ホルモンが関係する女性特有の疾患、男性特有の疾患などもあります。
今後は「ジェンダー」をいかに取り入れ、よりよい医療を患者さんに提供できるかが重要だと考えます。ただ肉体的に健康に引き戻すためではなく、質の高い人生を過ごすには、ジェンダーに起因する各々の体と心の健やかさを維持する必要があると思います。
当院ではジェンダーによる体と心の違いなども考慮し、いつまでも女性は女らしく、男性は男らしく・・・それぞれ美しく日々過ごせるよう、皆さまの健康をサポートしていきます。